大判例

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大阪高等裁判所 平成11年(う)1222号 判決

記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討すると,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。

(1) 被告人は,香港で生活していたが,大麻密輸の運び屋をして,金員を得ようと考え,知人に教えてもらったAなる男に連絡をとり,平成11年2月4日,同人から,大麻密輸準備のためバンコクに行くように指示され,支度金として2000香港ドル及び香港国際空港・バンコク国際空港間の往復航空券を受領した。

(2) 被告人は,上記受領した2000香港ドルの中から,400香港ドルで旅行用のバッグを購入し,500香港ドルを2000タイバーツに両替し,550香港ドルくらいで酒などを購入して費消し,翌5日,Aから受領した航空券の往路航空券を使用してバンコクに赴き,同所で待機中に残りの香港ドルもタイバーツに両替した。

右の2000香港ドルは,使途の指定はなく,後日の精算も予定されておらず,その費消状況から見ても,一部滞在経費等を含む報酬等と認められ,これを滞在費等の経費であると認定した原判決は,事実を誤認している。

(3) 被告人は,同月25日,上記2000香港ドルを両替して所持していたタイバーツの残りを84米ドルに両替し,同月26日,Bなる男から,本件犯行の報酬として1700米ドル並びにバンコク国際空港・関西国際空港間の往復航空券及び空港使用税等として1000タイバーツを受領し,同1000タイバーツのうち,650タイバーツを空港までのタクシー代,空港使用税等に使い,同航空券の往路航空券を使用して,原判示の犯罪に及んだ。

上記の1700米ドルは,文字どおり本件犯行の報酬であり,1000タイバーツも,後日の精算は予定されておらず,交通費及び空港使用税等の経費と余剰分は報酬とする趣旨で支給されたものと認められ,余剰分についても報酬とは認められないとした原判決は誤りである。

3について

改正前の麻薬特例法2条3項によれば,「不法収益」とは,「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産若しくは当該犯罪行為の報酬として得た財産」等と規定されているところ,原判決は,「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」とは,薬物犯罪により取得した金品等を言い,薬物犯罪実行のための資金や経費的な金員などは含まないとしているが,「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」とは,薬物犯罪の犯罪行為をしたこと若しくは薬物犯罪の犯罪行為をすることを原因として取得した財産を言い,規定の文書自体から,薬物犯罪の資金や経費に当てられるべき財産を除外しているものと解することはできず,これから資金や経費を除外する趣旨をうかがわせる規定はなく,同法が「収益」という用語を用いていることからも,同条項にいう「犯罪行為により得た財産」には,犯罪行為実行のための資金や経費に当てられるべき財産も含まれるものと解すべきである。

4について

(1) 被告人が,本件犯罪行為を行うことを理由に取得した上記金品のうち,1700米ドルは本件犯罪行為の報酬であり,2000香港ドル及び1000タイバーツは,前認定のとおり,それぞれ本件犯罪行為に要する経費に当たる部分と報酬に当たる部分が含まれるが,これが不可分一体のものとして交付されたものであるから,全体として同条項にいう犯罪行為の報酬とみるべきものであり,香港国際空港・バンコク国際空港間及びバンコク国際空港・関西国際空港間の各航空券は,同条項にいう犯罪行為により得た財産に当たり,いずれも同条項の不法収益にあたるというべきである。

(2) 押収された上記金品のうち,1700米ドル,350タイバーツ及び各航空券は,不法収益として改正前の麻薬特例法14条1項1号により,また,84米ドルは,不法収益に由来する財産として同法14条1項2号により,いずれもこれを没収し,1000タイバーツと350タイバーツとの差額2073円(円換算額),2000香港ドルと84米ドルの差額1万8993円(円換算額),航空券中各往路航空運賃相当分合計7万4799円(円換算額)は,すでに被告人が費消して没収することができないから同法17条1項によりこれを被告人から追徴すべきである。

したがって,上記のうち,1700米ドルを没収したのみで,その余の没収追徴をしなかった原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認ないし法令適用の誤りがあり,論旨は理由がある。

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